子供のこと

中学野球のキャプテンに選ばれた息子|「なるべきじゃ無い」と思っていた母のリアルな葛藤


ある日、「キャプテンになりたい」と言った息子。

けれど私は正直、「今のままじゃ無理」と思っていた。

家では忘れ物、道具のポイ置き、行動が伴っていない。
応援したいのに、素直に喜べない母の葛藤。

そして——ついにキャプテンに選ばれた日。

これは、中学野球部でキャプテンになった息子と、それを見守る母のリアルな葛藤と成長の記録です。

中学野球部のキャプテンになった日


ある日、息子が帰宅してニヤニヤが止まらない様子。

キャプテンになったよ!

えー!本当に?!

うん、本当に!まじで!

えーーー!すごいね!!よかったね〜!


思わず私も叫んで、ハグ。

涙しながら喜ぶ息子に、私もウルッときて、しばらく二人で喜びに浸った。

素直に喜べなかった日々

でも実は、この「キャプテン」という話題が出始めた数ヶ月前から、私はずっとモヤモヤしていた。

息子は「キャプテンになりたい」と言っていたけれど、家では野球の道具もカバンも放りっぱなし、忘れ物も多いし、暇があればゲームやスマホを見てゴロゴロ、だらしないところが目についてしまう。

やりたいって言うなら、まず行動で示して欲しい。
そんな状態でキャプテンになんてなれるの?

応援したい気持ちはある。
でも、現実の息子を見ていると、「なってほしい」とは素直に思えなかった。

むしろ「今のままなら、やめておいた方がいい」とすら感じていた。

苛立ちと矛盾

私の中でモヤモヤしていたのは、「やりたい」と言うわりに、何も変わらない息子への苛立ちだった。

「与えられてから頑張るって、どうなの?」
「やりたいなら、与えられる前から努力するべきじゃないの?」

でも一方で、「キャプテンになってほしいな」という期待も、実は心の奥にあった。
だからこそ、見ていてイライラする。

——自分の中の矛盾にも疲れてしまう日々だった。

夫の一言に救われる

そんなある日、夫にそのモヤモヤを話した。

すると夫はこう言った。

「“役職が人を作る”って言葉あるやん?」
その瞬間、私はハッとした。

「全然いいんじゃない?与えられたからこそやる気が出るってこともあるし。与えられたことにめいっぱい応えられれば、それで良いと思うけどな。」

・・・

今のままじゃダメ——そう思っていたけれど、「なってから育つ」という見方も確かにあるんだと気づいた。

キャプテンになりたいと伝えた日

息子はある日、顧問の先生に自分から「どうすればキャプテンになれますか?」と聞きに行ったそうです。

そのとき先生から返ってきた言葉は、
「まずは忘れ物をなくすこと。」

……息子、撃沈(笑)

やっぱり見られている。
分かってる先生、さすがです。

その後もいくつかアドバイスをもらったようですが、
その中でも一番に言われた「忘れ物」が、ぐさっときたようでした。

”俺無理やん”と諦めたようにも見えました。

でも、それでも「なりたい」という気持ちは変わらなかったようで、
ちゃんと自分の意思を伝えにいったその一歩は、
息子にとっても大きな挑戦だったと思います。

たった一人、手を挙げた息子

後日聞いた話では、先生は「キャプテンをやりたい人は手を挙げて。」と2年生部員全体に聞いたそう。

でも手を挙げたのは、息子ただ一人だったらしい。

他にも「狙ってるかも」と思っていた子は何人かいた。
でも実際にその場で手を挙げたのは、息子だけだった。

先生の中では候補は決まっていたようだけど、やりたい子が複数いれば話し合いにする予定だったそう。

このときの一歩が、息子の未来を変えたと思う。

やりたいことを、「やりたい」と言える、手を挙げることの大切さを改めて感じた出来事でした。

少年野球の監督への報告

その後の週末、息子と一緒に少年野球時代の監督にキャプテン就任の報告に行った。
実は息子、少年野球でもキャプテンを務めた経験がある。

挨拶のとき、監督に「キャプテンは誰が決めるの?」と聞かれたので、「顧問の先生です」と答えると、「先生か〜!」と一言。

その様子から、監督自身は「推薦した」つもりはなかったのかもしれない。

でも実際には、日頃から「〇〇がキャプテンでいいと思う」「あいつがまとまると思う」と、顧問の先生の前で話してくれていたらしい。

それが結果的に、息子の背中を押す“推薦”になっていたのかもしれない。

意図的でなくても、息子を深く信じてくれていたその言葉たちが、キャプテン就任に繋がったと思うと、感謝の気持ちでいっぱいになる。

「推薦してくださってありがとうございました」と伝えると、監督はこう返してくれた。

「いやいや、それは〇〇の力やろ」
「〇〇だったら、みんなまとまると思うよ。俺は絶対的に〇〇だと思ってた」
「キャプテンって聞いて、俺もさらに応援する気持ちが増したよ」

また、ありがたいお言葉をいただいた。

私はこれまでにも、息子のことを監督に相談したり、家での様子を話したりしてきた。
そのたびに監督は、

「〇〇は大丈夫。あいつはちゃんとやるよ」

と、いつも変わらずに信じてくれていた。

家ではつい口うるさくなってしまう私だけど、外ではしっかりと頑張っている息子の姿を、
ずっと見守っていてくれる大人がいること――

それが本当にありがたくて、何度も心を救われてきた。

複雑な気持ち

キャプテンになれたことは、もちろん嬉しい。誇らしい。

でも一方で、「なりたかったけどなれなかった子がいるかもしれない」と思うと、なんとも言えない気持ちになる。

「なんであの子なの…」って思ってる子や親がいるかもしれない。正直、子供のスポーツの世界はそんなものだ。

だからこそ、息子に改めて伝えた。

「他にもなりたかった子がいたかもしれない。もしかしたら納得してない子もいるかもしれない。だから、選んでくれた先生やメンバーに、“〇〇でよかった”って思ってもらえるように、頑張るしかないよ!」

”しっかりしてくれ〜!”そんな思いをこめて(笑)。

家では変わらない息子


キャプテンになった日、息子はずっとニヤニヤしていた。

「やった〜〜〜〜〜〜!!!」と喜びをかみしめながら、「パパに自分で言いたい!」と宣言。

でもその日は塾でパパとすれ違う日だったので、
「もし帰ったときに寝てたら、ママが言っといて!」ということになった。

私は息子の代わりに、隠し撮りしながらパパに報告(笑)

息子のことをずっと見守っていたパパは、案の定、ウルッと泣いていた。

家ではそのあとも、相変わらずカバンは放りっぱなしだし、道具はそこら中に転がってるし、全然“キャプテン感”はない(笑)

でも、それでいいのかもしれない。

あれもこれも求めてしまうけど、少しずつ意識して、失敗して、悩んで…また新たな成長を見せてくれることを願うしかない。

家での姿がすべてじゃない

家で見る息子の姿だけを見て、「まだ無理だ」と思っていた私。

でも今回改めて気づいたのは、家で見える子どもがすべてじゃないということ。

友達、先生、監督、コーチ——外から見た息子には、家とは違う一面があって、
ちゃんと頑張っていたんだなと気づかされた。

誰かが「任せてみよう」と思ってくれたのは、
親の見ていないところで、彼なりにちゃんと積み上げていたものがあったからこそ。

その姿を見ていてくれる人がいることが、何よりも嬉しい。

子育てって親だけじゃないんだって、
どこかに見てくれて気づいてくれて、信じてくれる人がいる。
そのことが、子供にはもちろん、母である私にとってもとてもありがたいことだと改めて気付かされました。

”ジャンケン”すら特別な日

キャプテンに決まった翌日。

息子はいつもより早く起きて準備をし、張り切って試合に出発していった。

「明日のジャンケン楽しみやわ〜」と前日から嬉しそうに話していた。

そう、“先攻・後攻を決めるジャンケン”ですら、キャプテンの特権。

その小さな誇らしさが、息子の中にしっかり芽生えているのを感じた。

思春期、そしてこれから

息子は中学2年。思春期ど真ん中。

家では反抗的な態度にイラッとしたり、理解できない言動に戸惑うこともたくさんある。

でも今回のことがきっかけで、少しだけ関係性が変わる予感がしている。

きっとこれから、野球への熱もさらに強くなっていくだろう。

だから私も、その気持ちにできる限り応えたい。

息子が頑張るなら、私も頑張る。

母として、目立たず、でもしっかりと、そっと支えていきたい。

おわりに

親って本当に、揺れます。

応援したい。信じたい。
でも、目の前の子どもを見ると、不安にもなる。
そんな矛盾に揺れながら、子どもと一緒に成長していくのかもしれません。

これから息子がキャプテンとしてどう変わっていくのかは分からない。

ただ私は、目立たず、焦らず、でもちゃんと信じて、そっと支えていきたいと思っています。

 

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